日本の夏の風物詩のひとつである「花火」。実は日本だけではなく、海外にも花火を打ち上げる、楽しむという文化があります。日本と海外の花火ではそれぞれ特徴や打ち上げる意味が異なるのをご存じでしょうか。
この記事では、日本と海外の花火の特徴や打ち上げる意味の違いをそれぞれ解説します。外国の方に日本の花火の文化や特徴を説明したいときにも、ぜひ役立ててください。
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日本の夏の風物詩の代表といっても過言ではない「花火」。英語では”firework”となります。毎年夏になると日本全国各地で花火大会などが行われ、賑わいを見せますよね。一方、海外でも世界的なイベントで花火を上げているところは多く見られます。日本と海外の花火の特徴を踏まえた違いを解説します。
花火の発祥は中国で、その後ヨーロッパ各地や日本に伝わりそれぞれの国で独自に発展してきました。日本の花火は世界の花火と比べても独特で、背景には日本人の持つ繊細さ、美意識などがあると言われています。
日本の花火には、海外の花火とは異なる特徴があります。
球形に開く花火は日本独自のものです。寸分の狂いもないように花火の玉に星を並べる職人技がほどこされています。玉に狂いがあるときれいな球形に開くことができないため、日本の繊細な感覚や技術が活かされた花火と言えるでしょう。
日本の花火はもともと単色しかない「和花火」と呼ばれるものだけでしたが、明治以降に海外からカラフルな火薬が入ってきたのを受けて、さまざまな発色の花火を表現できるようになりました。近年では花火の消え際に色の変化を入れることで、日本人が持つ情緒的な部分を繊細に表現した花火も多くなっています。
では、海外の花火と日本の花火にははどのような違いがあるのでしょうか。日本の花火と比べた海外の花火の特徴をまとめました。
もともとカラフルな火薬の技術は海外の花火で使われていたため、海外の花火は明るい色のものが多いのが特徴です。ただし、ひとつの花火に使用している火薬は一種類のため、色も変化しません。近年日本の花火大会でも多くみられるミュージックスターマイン(音楽に合わせて打ち上げる花火)は、もともと海外が得意としていたイベント花火でした。
花火はただ「楽しいから」「きれいだから」などの理由で打ち上げられているわけではありません。日本をはじめ世界各国の花火には、それぞれ歴史や思いが詰まっています。世界的に見た花火の起源と、各国における花火が上げられる意味を解説します。
花火の原型は「のろし」と言われていて、紀元前の古代ギリシャやローマなどで使われていました。その後、中国で薬を作る練丹術師(れんたんじゅつし)により火薬が偶然発明され、軍事開発者の手に渡り武器として使用されるようになります。その後13世紀に火薬がイスラム諸国へ伝わると、武器としてだけではなく花火として使用されるようになりました。
現在の花火の原型となったのが、14世紀後半イタリアのフィレンツェで始まった花火です。すぐにイタリアの貴族の間で花火が広がり、戴冠式(たいかんしき)などのお祝い事で使用されるようになりました。
日本には、文永11年の蒙古軍(もうこぐん)の襲来で、武器としての火薬が伝わります。その後、徳川家康が中国人によって打ち上げられた花火を見たことから、江戸時代になると花火の鑑賞が始まりました。
本格的に日本で花火大会が始まったのは1733年の徳川吉宗将軍時代と言われています。享保11年の大飢饉を受け、将軍吉宗が慰霊と悪疫退散を祈って開催した水神祭のときに、花火を打ち上げたのが由来とされています。
また当時「両国の川開き」として、5月28日から8月28日までの期間、花火の打ち上げが頻繁に行われていました。この両国の川開きは「川開きの花火大会」として隅田川の花火大会の由来であり、現在も長い歴史を誇る花火大会のひとつです。
将軍吉宗が慰霊と悪疫退散を祈って花火を打ち上げたことから分かるように、日本の花火には、元々慰霊や疫病退散の意味を込めて上げられています。また、一説によると花火には死者の魂を導くお盆の「迎え火」や「送り火」の一種とも言われています。このことからも、日本全国の花火大会は鎮魂の祈りや供養の気持ちを込めたものも多いです。たとえば「長岡まつり」は戦没者の慰霊、「熊野大花火大会」は先祖の霊を導く送り火・迎え火として花火大会が開催されています。
花火大会が夏に開催されるのは日本独自の風習で、海外ではさまざまな季節に花火が打ち上げられています。ヨーロッパでは、キリスト教の聖人のお祭りなどお祝いのために花火が打ち上げられています。ヨーロッパの貴族がお祝いで花火を打ち上げるとき、お城のライトアップの意味合いも兼ねて打ち上げているそうです。近年でも、庭園やエッフェル塔などのライトアップを兼ねた花火が打ち上げられています。
花火発祥の地である中国では、古くは爆竹の大きな音を魔除けとして使っていたのが花火の起源です。近年では魔除けとしてだけでなく、お祝いとしても爆竹は使われています。そのほかの海外各国でも花火は見られますが、多くはお祝いとして打ち上げられていることが多いです。たとえばアメリカでは独立記念日や新年に、花火が打ち上げられています。国によっては花火の色やライトアップを楽しむだけではなく、スペインやイタリアのように花火の音を楽しむ国もあります。ほかにも、ギリシャの花火を町中で飛ばし合うお祭りのように、イベントのアイテムとして花火を使う国もあります。
打ち上げ花火と同じくらい、日本ではおなじみの手持ち花火。夏休みやアウトドアシーンで、手持ち花火を楽しむ方も多いですよね。手持ち花火は英語で”Sparklers”と言います。一方、日本と海外では手持ち花火を事情が大きく違うことはご存じでしょうか。手持ち花火について、海外と日本の事情を比較しながら解説します。
日本と同じく、海外にも手持ち花火は存在します。けれども海外の国では日本のように気軽に手持ち花火はできず、ほとんどの国が許可制または禁止となっています。
アメリカの多くの州では手持ち花火は「違法」となっています。手持ち花火が許可されている州もありますが、禁止されている州では火災予防の観点より、公園やビーチさらには個人の庭でも手持ち花火を使うことは禁止です。たとえばコロラド州では花火は山火事の原因になることから禁止されています。
ワシントン州では、州法により一般向け花火の販売を規制、製造と販売も許可制となっているため、日本のようにどこでも花火が売っているというわけではありません。独立記念日などの一部祝日に限り、手持ち花火が許可されることがありますが、花火が許可された日は例年花火による火災や、やけどなどのケガが増えてしまうそうです。
ヨーロッパ各国では国によって手持ち花火の事情は異なります。スイスやスペインは日本のように夏になったら打ち上げ花火や手持ち花火を楽しむ人も多いです。ただし日本のように途中で色が変わるものはありません。ベルギーは大きな花火をするときには許可がいるため、オランダまで花火をするために足を運ぶ人もいるそうです。ドイツやイギリスでは、ニューイヤーイブなど特別な日のみ花火が許可されています。
ほかにも、メキシコではニューイヤーのみ、カナダは許可制、ニュージーランドは禁止など、海外によって花火の事情は異なってきます。
海外各国では手持ち花火が禁止されている国も多いため、日本に来て手持ち花火を楽しむ海外の方も多いです。その中でも特に「線香花火」が人気となっています。線香花火も英語で”Sparklers”ですが、日本ならではの手持ち花火でもあるため”Japanese Sparklers”とも呼ばれています。
日本の線香花火は江戸時代に玩具花火として誕生しました。火が小さいことで比較的安全に遊べる、安価なことから今でもポピュラーな手持ち花火として親しまれています。海外の方に線香花火を説明するときは“Japanese Sparklers are traditional small fireworks in Japan.”(線香花火は日本の伝統的な小さい手持ち花火です)とすると、イメージされやすいでしょう。
日本と海外の打ち上げ花火、手持ち花火の比較やそれぞれの特徴を解説しました。打ち上げ花火はカラフル、きれいに開く、手持ち花火はどこでも購入できて気軽に楽しめるなど、日本の花火を海外の方は賞賛し、興味を持ってくれています。まさに花火は、日本が誇れる文化のひとつであると言えるでしょう。私たちが自分の国の文化に誇りを持ち、海外の方にしっかりと良さを伝えられればきっと喜ばれるのではないでしょうか。ぜひ花火をはじめとした、日本の文化を海外の方に英語で伝えてみてくださいね。
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